建設業「施工管理」で外国人を雇用する方法・要件を解説

日本の建設業界では、熟練技術者の減少による人手不足が深刻化しており、外国人材の活用が重要な課題となっています。

技能実習や特定技能を活用することにより、現場作業の人手不足を解消することが可能となりますが、これらのビザでは、施工管理業務に従事させることが困難です。

そこで、本記事では、施工管理で外国人材を雇用する際の在留資格や具体的な業務内容、雇用のメリット・デメリット、手続きの流れ、注意点等について詳しく解説します。

建設業で受け入れ可能なビザ

まず、建設業で受け入れ可能なビザは以下のとおりとなっております。ビザごとに従事できる業務内容が定められており、それに違反すると、不法就労(助長罪)に該当するため、注意が必要です。

ビザの種類ビザの内容想定されている業務
技術・人文知識・国際業務主に大学卒業者を対象にした、いわゆるホワイトカラー職種のビザ施工管理等の工事責任者が想定されており、現場作業はできません。
特定活動46号日本の大学または大学院を卒業し、日本語能力試験N1等に合格した方向けの通訳及び管理にかかるビザ現場での通訳業務、工事現場にかかるあらゆる業務に従事可能。もっとも、現場作業だけに従事させることは想定されていません。
技能実習現場作業を行うことができるビザで、送り出し機関及び監理団体を通さなければいけないことが特徴あらかじめ定めた技能実習計画に沿って業務を行うことになります。
特定技能技能実習の上位概念であり、即戦力人材として現場作業を行うことができるビザ、外国人に対する「支援」が必須であることが特徴現場で様々な業務を行うことが可能となっています。ただし、単純作業のみに従事させることはできません。
身分系ビザ
(永住・定住・配偶者)
仕事内容に制限のないビザで、日本人と同じように働くことが可能業務に制限はありません。
特定活動9号
(インターン)
海外の大学と提携し、教育課程の一部として働くことができるビザあくまで大学教育の一貫であることから、現場作業のみに従事させることは想定されていません。

施工管理で働くことができるビザ

ここから、施工管理で働くことができるビザについて見ていきます。具体的には、以下のビザであれば、施工管理として外国人を雇用することができます。

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定活動46号
  • 特定技能2号
  • 身分系(永住・定住・配偶者)

技術・人文知識・国際業務

まず、技術・人文知識・国際業務というビザは、いわゆるホワイトカラー職種のためのビザで、国内外問わず大学を卒業した外国人の方向けのビザと考えられています。

このビザでで想定されている業務は、以下のとおりで、「単に知識が必要というだけでは足りず、大学や専門学校などで学ぶ学問としての体系的な知識が、その業務を行う際に求められたり業務パフォーマンスを向上させたりする程度の業務」が想定されています。

技術・人文知識・国際業務

「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」

つまり、このビザで働くことができる業務は、「学問的な知識を必要とする業務」で、日雇い労働者やアルバイトが行うことができる、現場作業は含まれておりません

施工管理の業務として求められる能力は、まさに学問的な知識を必要とする業務であることから、この「技術・人文知識・国際業務」というビザで、施工管理の業務に従事することが可能となっております。

しかしながら、前述のとおり、原則現場作業には従事できません。もっとも、現場作業にも多種多様なものがあること、日本人の施工管理技士でも現場作業を行う場合があること、から絶対に従事できないとは言い切れないことから、どのような作業であれば可能かどうかは、学問的な知識が必要かどうか、という観点から考えて判断することが必要になってきます。

さらに、施工管理として採用した日本人の新入社員を、研修の一環として現場作業に従事させるということをキャリアプランとして明確に定めている企業の場合には、外国人においても同様に、研修期間は現場作業に従事できる可能性があります。

この研修期間については、ビザ申請の際に出入国在留管理庁に文章で説明しておく必要があり、それを欠いて、研修として現場作業に従事させた場合、不法就労助長罪として罰せられる可能性があるので、注意が必要です。

このように、技術・人文知識・国際業務というビザで外国人を雇用する場合、慎重に出入国在留管理庁へ申請する必要があります。

有料職業紹介事業者や行政書士から詳細な説明を受けずに、外国人を受け入れてしまい、結果として、不法就労助長行為をしてしまった、という企業が非常に多いため、外国人を雇用する際には、注意しましょう。

また、仮に最初の申請で許可を得たとしても、更新時に詳細な資料を求められたりして、結果更新できないということもありますので、初回の申請時に、更新時に必要となる証拠書類については、あらかじめ考えておくことが求められます。

特定活動46号

続いて、特定活動46号について説明します。このビザは、日本の大学を卒業し、かつ日本語能力N1以上のレベルを有する外国人のためのビザとなっております。

上で説明した「技術・人文知識・国際業務」では、原則現場作業に従事することはできませんが、この「特定活動46号」では、業務で通訳をすることを前提に、施工管理業務はもちろんのこと、現場作業に従事することが可能です。

特定技能2号

特定技能は、1号と2号の2つがあり、2号においては、施工管理業務に従事させることが可能です。

なお、特定技能の制度全般については、以下の記事を参照にしてください。

「特定技能」雇用方法

特定技能外国人を雇用するまでの流れ 特定技能外国人を雇用するためには、他のビザと異なり、非常に複雑なステップを踏まなければなりません。 タスク 内容 ①業務内容の要…

特定技能制度においては、以下の3つの区分に分類しビザが発行されます。

土木区分建築区分ライフライン設備区分

各区分で想定される業務内容は以下のとおりとなっております。

非常に複雑ですが、建設業許可をお持ちの建設業者さまであれば、基本的に特定技能人材は雇用することができます。

土木区分建築区分ライフライン設備区分
〈 分野、区分の概要 〉
 複数の建設技能者を指導しながら、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業等に従事し、工程を管理

〈 従事する主な業務 〉
 型枠施工 / コンクリート圧送 / トンネル推進工 /
建設機械施工 / 土工 / 鉄筋施工 / とび / 海洋土木工
その他、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業

〈 想定される関連業務 〉
・原材料・部品の調達・搬送
・機器・装置・工具等の保守管理
・足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
・足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
・清掃・保守管理作業
・その他、主たる業務に付随して行う作業
〈 分野、区分の概要 〉
複数の建設技能者を指導しながら、建築物の新築、増築、改築若しくは移転又は修繕若しくは模様替に係る作業等に従事し、工程を管理

〈 従事する主な業務 〉
型枠施工 / 左官 / コンクリート圧送 / 屋根ふき /
土工 / 鉄筋施工 / 鉄筋継手 / 内装仕上げ /
表装 / とび / 建築大工 / 建築板金 / 吹付ウレタン断熱 /
その他、建築物の新築、増築、改築若しくは移転、修繕又は模様替に係る作業

〈 想定される関連業務 〉
・原材料・部品の調達・搬送
・機器・装置・工具等の保守管理
・足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
・足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
・清掃・保守管理作業
・その他、主たる業務に付随して行う作業
〈 分野、区分の概要 〉
 複数の建設技能者を指導しながら、電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理の作業等に従事し、工程を管理

〈 従事する主な業務 〉
 電気通信 / 配管 / 建築板金 / 保温保冷
その他、ライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業

〈 想定される関連業務 〉
・原材料・部品の調達・搬送
・機器・装置・工具等の保守管理
・足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
・足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
・清掃・保守管理作業
・その他、主たる業務に付随して行う作業

身分系ビザ(永住・定住・配偶者)

最後に、雇用という文脈において一番価値の高いビザである、身分系のビザについて説明いたします。

身分系のビザは、以下の4種類で、就労ビザと異なり業務内容の制限なく働くことが可能となっています。

ビザの種類内容
永住者日本に長く住み、各種義務を滞りなく履行することで得られるビザ。永住者の生活保護問題が顕在化しており、近年永住権の取得は難化傾向にある。
日本人の配偶者等日本人と結婚した配偶者及びその子供に与えられるビザ。離婚したり死別したりした場合、ビザがなくなる可能性もあり、注意が必要。
永住者の配偶者等永住者の配偶者及びその子供に与えらえるビザ。これも、離婚したり死別したりした場合には注意が必要。
定住者日系3世などの日本に定着性のある方に与えられるビザ。配偶者ビザで離婚した場合に、このビザへの変更が必須。

外国人労働者を雇用するには

ここからは、外国人労働者を雇用するための流れについて説明していきます。

①求人を出すポストの業務内容の確定

前述のとおり、現場作業を含むか含まないかで、求人を出すビザが異なります。

そのため、施工管理の中にどのような現場作業がどれくらいの量で含まれるのか、あらかじめ確定させる必要があります。

現場作業を多く含む場合には、特定技能1号、技能実習、特定活動46号、身分系のビザで募集をかけることになります。

②募集

業務内容及びビザを確定させたら、募集をかけます。

有料職業紹介事業者への依頼が一番早いですが、年収の30%という高額な報酬を支払う必要があることから、なるべく自社で募集をかけることをおすすめします。

自社で募集をかける場合には、ハローワーク、indeed等の媒体、facebook等のSNS、海外の送り出し機関をうまく活用していく必要があります。

③履歴書の確認及び面接

求人の応募があったら、履歴書を確認し、自社で働くことができるビザを持っているか、または取得できるか確認します。

確認して問題なければ、面接に移ります。面接では、過去の経歴に嘘がないか、犯罪を犯したことがないか、日本で働きたい理由をしっかりと確認する必要があります。

本人の経歴について、嘘があった場合、入管の申請時に指摘が入り、最悪ビザが発行されない可能性もあります。

また、日本で働きたい理由が曖昧な場合は、すぐに退職する可能性が高いので、この点は注意しましょう。

日本語力をそこまで求めないのであれば、通訳を介して面接を行うのも有効です。

日本語能力が高い外国人は、引く手あまたであることから、給与を高めに設定する必要があります。

もっとも、日本語能力がN4以上レベルあれば、2年程度の実務研修で、N2まで伸ばすことができるので、面接時点でそこまで求める必要はないと考えます。

④契約締結、ビザ申請

マッチングが成立すれば雇用契約を締結し、必要書類を収集しビザ申請を行います。

すでに日本にいる方については、現在の在留期限を確認し、期限が切れる前に申請をする必要があります。

申請中に期限が切れたとしても、2ヶ月間は猶予があるので問題ありません。

⑤許可、就労開始

日本にいる方について、申請の許可が降りたら、在留カードを受け取り、就労開始となります。

海外からくる方については、日本で発行される認定証明書という書類をもって、海外の日本大使館でビザ申請をして、日本に入ってくることになります。

外国人雇用で必要となる企業側の条件

外国人を雇用する場合、上述のとおり、ビザ申請を行う必要があります。

その際に、入管に以下の書類を提出する必要があります。これは、企業が外国人を雇用し、給料を安定的に支払い続けることができるか否かを審査するために求められています。

  • 履歴事項全部証明書
  • 給与所得の源泉徴収票等法定調書
  • 決算書または残高試算表
  • 雇用契約書
  • 会社概要
  • 新規ポストの場合は事業計画書
  • スタッフリスト

この他、会社の歴史が浅い場合、赤字決算が続いている場合には、より多くの書類が求められることになります。

まとめ

今回は、施工管理で外国人を雇用するための方法について説明してきましたが、いかがでしたか?

弊所では、外国人雇用に関する相談を無料で実施しておりますので、ぜひご連絡ください。

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