「特定技能」外国人を支援するための組織である「登録支援機関」になるには、厳格に定められた要件を満たさなければなりません。

登録支援機関とは

登録支援機関とは、「特定技能」外国人が日本で安心安全に就労・生活していくための支援(サポート)するための民間企業のことです。「特定技能」という在留資格(ビザ)で、外国人を雇用する場合、雇用主は法令で定められた支援を外国人に対して実施しなければなりません。

支援内容は、下図のとおりですが、この支援をただすれば良いという問題ではなく、これらの支援をする体制が整備されていることも雇用する企業側に求められております。

支援体制の要件

① 以下のア・イ・ウのいずれかに該当すること

過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。)の受け入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ役職員の中から、支援責任者及び支援担当者(事業所ごとに1名以上。以下同じ。)を選任していること(支援責任者と支援担当者は兼任可。以下同じ)

イ 役職員で過去2年間中長期在留者(就労資格のみ。)の生活相談等に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること

ウ ア又はイと同程度に支援業務を適正に実施することができる者で、役職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること

外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していること

③ 支援状況に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと

④ 支援責任者及び支援担当者が、支援計画の中立な実施を行うことができ、かつ、欠格事由に該当しないこと

⑤ 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと

⑥ 支援責任者又は支援担当者が、外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること

⑦ 分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)

はじめて外国人を雇用する場合には、この支援体制の要件を満たしていない場合がほとどんです。その場合、「特定技能」外国人を雇用することはできないのでしょうか?答えはNOです。「登録支援機関」に委託することで、企業は、特定技能外国人を雇用することができるようになります。

この支援の対価として、登録支援機関は企業から支援費用を徴収することになります。下図は、登録支援機関のビジネスモデルの概要図ですので、参考にしてみてください。

登録支援機関の数

では、どれくらいの企業が登録支援機関として登録されているのでしょうか?2024年8月末現在で、なんと9,992件もの登録支援機関が立ち上がっています。2019年「特定技能」制度が創設されてから、わずか5年でこの数ということが、特定技能ビジネスの魅力を物語っています。

特定技能外国人の数

では、特定技能外国人の数はどうでしょうか?2023年12月末現在で、なんと208,462人もの外国人が特定技能として日本で就労しているのです。

制度が始まってわずか5年でこの数です。当初、日本政府は、特定技能外国人の受入れ人数を、345,000人と設定しておりましたが、2024年3月末に受入れ上限を820,000人に変更する決定をしました。

つまり、これからもさらに特定技能外国人の受入れが加速していくことになるのです。

登録支援機関の登録要件

では、どのようにして登録支援機関になるのでしょうか。登録支援機関の登録要件は、以下のとおりですが、後ほど個別に説明していきます。

登録支援機関 登録要件

支援責任者および1名以上の支援担当者がいること(兼任可)

②以下のいずれかに該当すること

ア)登録支援機関になろうとする個人または団体が、2年以内に中長期在留者(就労資格に限る)の受入れ実績があること。

イ)登録支援機関になろうとする個人または団体が、2年以内に報酬を得る目的で、業として、外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること。

ウ) 選任された支援担当者が、過去5年間に2年以上中長期在留者(就労資格に限る。)の生活相談業務に従事した経験を有すること。

エ)上記のほか、登録支援機関になろうとする個人または団体が、これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められていること

③外国人が十分理解できる言語で情報提供等の支援を実施することができる体制を有していること。

④1年以内に責めに帰すべき事由により特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させていないこと。

⑤支援の費用を直接又は間接的に外国人本人に負担させないこと。

①支援責任者及び支援担当者

支援責任者とは、登録支援機関の役員または職員(非常勤でもOK、業務委託は不可)で、支援担当者を監督する立場にある者のことです。

支援担当者とは、実際に支援を行うことを任務とする者のことです(非常勤不可)。

両者は兼任することができるので、1名準備できれば問題ありません。

②ア)中長期在留者の受け入れ実績

登録支援機関になるためには、2年以内に就労資格をもった中長期在留者を当該企業で雇用した実績があることが求められます。

2年間ではなく、2年以内に受け入れた実績が必要であることから、1ヶ月でも雇用していればこの要件を充足することになります。

②イ)報酬を得る目的で各種相談業務に従事した経験

これは、在留外国人に対して、相談や手続きの代行を報酬を得ておこなった経験のことをいっており、士業や士業法人しか該当しません。

②ウ)生活相談業務に従事した経験

ここでいう生活相談業務に従事した経験とは、外国人に対して、生活に必要な契約に係る支援や、日本の生活ルールや交通ルールなどの日本法令の教示などを仕事として行ったことがあることが求められています。その例としては、①技能実習制度における生活指導員を務めた者、②法律事務所等で相談員を務めた者があげられます。

②エ)同程度に実施できる者

上記ア)イ)ウ)を満たさないものの、これらと同程度に能力・体制を整備しており、相談対応等の支援を責任をもって適切に行うことが合理的に期待できるものとされています。個別事情による判断になることから、日本にいる外国人の雇用監理や相談対応を適正に実施してきたこと事業の公益性などが考慮され、判断されます。

③十分に理解できる言語で外国人を支援できる体制

特定技能外国人が理解できる言語を扱える職員がいるか、もしくは必要な場合に通訳人を確実に確保できる環境があることが求められます。ただし、相談体制としては、24時間365日即時に対応ができることまでは求められていません。目安としては、平日3日以上休日1日以上対応することが求めれています。

以上の要件を満たした場合でも、過去に法令違反を犯したことがあるなどの以下の登録拒否事由がある場合には、登録することができないので、注意が必要です。

登録拒否事由

①関係法律により刑罰を受けたことがある

②精神機能障害がある者や、破産手続き開始決定を受けて復権を得ない者など、申請者の行為能力や適格性に問題がある

③過去に登録支援機関の取り消しを受けたことがありその日から5年が経過していない

④過去5年以内に入管法や労働関係法令に関して不正行為を行ったことがある

⑤役員に暴力団員がいる

⑥過去に登録支援機関として、自らの帰責性で外国人について行方不明者を発生させている

⑦支援責任者及び支援担当者が選任されていない

⑧中長期在留者の適正な受け入れ実績がないこと

⑨適切な相談対応の体制が構築されていないこと

⑩支援業務実施に係る文書の作成等をしていないこと

⑪支援責任者と雇用主との関係性が、登録支援機関の登録に適さないこと

⑫外国人に支援費用を負担させていること

⑬支援委託契約において費用を明示していないこと

登録支援機関になるには

以上の要件を満たすために、結局どうしたら良いのか。一番大きな課題が「過去に外国人の受け入れたことがあるか、または相談業務にのったことがあるか」という点ですが、これを満たすには、人を新たに雇用するしかありません。具体的には技術・人文知識・国際業務という就労ビザで外国人をあらたに雇用する、もしくは過去に相談業務をおこなったことがある日本人従業員を雇用します。

過去に受け入れた外国人、相談にのった外国人の情報を求められるので嘘はつけません。

実際に支援を行う場面でも、外国人のリクルーティングの場面でも母国語での活動が必要になるため、外国人を雇用して相談体制を構築することが、得策です。

登録の方法

つづいて、登録の方法について説明していきます。以下の必要書類を集めて、最寄りの出入国在留管理局に提出します。

なお、新規登録の手数料に28,400円必要となります。詳細は、出入国在留管理庁HPをご確認ください。

必要書類

  1. 登録支援機関の登録(更新)申請に係る提出書類一覧・確認表
  2. 手数料納付書
  3. 登録支援機関登録申請書
  4. 登記事項証明書
  5. 定款または寄付行為の写し
  6. 役員の住民票の写し
  7. 役員に関する誓約書
  8. 登録支援機関概要書
  9. 登録支援機関誓約書
  10. 支援責任者の就任承諾書および誓約書
  11. 支援責任者の履歴書
  12. 支援担当者の就任承諾書および誓約書
  13. 支援担当者の履歴書
  14. 支援委託手数料に係る説明書(予定費用)
  15. 受け入れた中長期在留者のリストまたはこれまで生活相談を行った中長期在留者のリスト
  16. 返信用封筒

「登録支援機関」立上げ伴走支援サービス

いかがだったでしょうか?「特定技能」ビジネスは、今注目を集めているビジネスで、新規参入者が後を絶ちません。しかし、特定技能という在留資格は非常に複雑で、うまく扱っていくことが非常に困難です。その証拠に過去1年間に一人も支援していない事業所がなんと25%もあるといった状況です。また、支援実績が10人以下の事業所が37%と、約半数の事業所がしっかりと事業経営ができていないという状況です。

「特定技能」ビジネスに参入したいけど、方法が分からないといった事業者さま向けに弊所では、「登録支援機関」立上げ伴走サービスを提供しております。

登録支援機関の登録から、「特定技能」に関する詳細な研修人材確保支援から営業資料作成及び商談の同席受け入れ支援まで一気通貫で支援させていただきますので、興味ある方は、ぜひお問い合わせください。

ご依頼の流れ

とりあえず話を聞きたいという企業さまも大歓迎です。雑談ベースでお問い合わせいただくことが多いので、外国人雇用のほか、相続や離婚の相談になることも多々ございます。法律に関する幅広い知識を有している、行政書士だからこそできる無料相談です。ぜひ一度お話を聞かせていただければと思います。

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